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ひらめき

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 「家族や同僚、友人のことで、腹が立って仕方がない。どうしたらいいでしょう」と相談を受けることがある。わたし自身、日々の生活の中で、誰かに対して無性に腹が立つことはある。そんなとき、どうしたらいいのだろう。

 怒りに呑み込まれそうなとき、大切なのは、怒りから距離を置くことだと思う。怒っている自分を少し離れたところから見て、「わたしは、何に腹を立てているのだろう。なぜ、あの人に、これほど怒りを感じるのだろう」と自分自身に問いかけるのだ。

 すると、たとえば、相手が自分のいうことを聞いてくれないから腹が立っていることに気がつく。そこまでいけば、怒りから抜け出すまでもう一歩だ。次は、「なぜ、相手はわたしのいうことを聞かないのだろう」と考えればいい。相手の気持ちを想像するうちに、相手には相手の言い分があると気づけば、怒りは少しずつ消えてゆくはずだ。

 相手が自分より高く評価されていることに、嫉妬している自分に気づくこともある。嫉妬しているから、相手のやることなすことすべてに腹が立つのだ。そのことに気づいたなら、「なぜ、わたしはあの人と自分を比べてしまうのだろう」と考えればいい。自分も、その人と同じように高く評価されたくて仕方がないのだと気づけば、むしろ、怒っている自分の方に問題があることがわかる。「評価されたいなら、人を嫉妬するより他にやることがあるだろう」とまで思えるようになれば、もう怒りは消えている。

 怒りに限らず、感情や欲望などに押し流されそうになったときには、自分からちょっと距離を置いてみるのがいい。少し離れて広い視点から見れば、何が問題なのか、自分はどうしたらいいかが、きっと見えてくるだろう。