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ふれあい

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 「目でなら さわってもいい?」

 これは、詩人のまどみちおさんが書かれた「ことり」という詩の一節です。美しく繊細な小鳥に触ってみたい、でも小鳥に許してもらえない。だから目でそっと触らせてね、と。多くの人に共感と衝撃を与えている箇所でしょう。

 手に乗るよう訓練された飼い鳥もいますが、多くの種類は触れられるのを恐がります。ただ、寒さや、季節毎の毛の生え変わりの失敗で弱っているときは、両手でそっと包んで暖めてあげると元気になることがあります。そんな小鳥たちと話してみたい、フワフワの羽にちょっとだけ触らせてほしい、と思うのは人間の自然な気持ちかもしれません。

 私がずっと以前に数年間飼った小鳥たちは、こちらから触らせてはくれませんでしたが、あちらから寄ってきて手から餌を食べることはありました。くちばしや羽根がフッと手に触れると、静かなときめきを覚えたものです。

 けれど、私はやがて、鳥の飼育を卒業する決意をしました。自然観察の師と仰ぐ日本野鳥の会創始者、中西悟堂先生の「野の鳥は野に」という言葉に心から同意したからです。それでも、小鳥を「目で触る」ことができない私にとって、彼らと近しく過ごさせてもらった経験は生涯の宝となりました。

 人と触れ合うときにも、私は小鳥たちに教わった方法を適用します。相手の心にそっと触れて良いとき、触れずに待つとき、しっかり触れて気持ちを通わせるとき。そうした見分けをしながら、隣人に心を向けるようにしています。

 神様は、私たちが祈る前から祈りの内容をご存知だとよく言われますもしかするとこんなふうに、絶妙な触れ合いの距離を測りながら見守ってくださっているのかもしれません。