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いごこち

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 外国通信社でニュースの翻訳をする仕事と、エッセイストとして活動する仕事を経験するうちに、取材テクニックの一つに強く惹かれるようになりました。それは、取材の空間を一瞬で「居心地の良い」雰囲気に変えてしまう技術です。

 新入社員研修で先輩記者の取材に同席したときのこと。質問して答えをたくさんもらうのだとばかり思っていたら、先輩が「私は前に・・」と本題と関係ない身の上話を切り出したのです。たった一言でしたが、その一文によって相手が「ああ、ありますよね」といった感じで滑らかに語り始め、会話は自然と本題に入ります。話せないことも聞きたい、聞かれても話せない、そんな静かな緊張感がありながらも、淡々と取材が進んでいきます。その空間は、適度にリラックスできる居心地良い雰囲気のままでした。

 エッセイストとして私自身が取材を受けるときにも、記者さんたちは大変巧みに空間の雰囲気を作ります。ユーモアで始める方もいれば、「ご著書拝読して鳥の声を聞きにいってみました」と、作品に触れて心を開かせてくださる方もいます。

 やがて、私自身も取材先で話を聞かせていただく機会が増えました。学んだテクニックを実践で磨く番になったのです。

 具体的な技術はそれぞれで開発するものですが、大きくいうと、私はまず、いまいる空間を「居心地良く」することから始めるようにしています。空間全体を「良い雰囲気」で包もう、と思うのです。それだけで不思議にそうなっていくのです。この姿勢は、講演でも自然観察指導でも同じです。

 ところで、様々経験を積む中で、ときどきこんな思いが浮かぶようになりました。

 私たちの地球は、神様にとってどんな居心地なのかしら、と。