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生きがい

シスター 萩原 久美子

今日の心の糧イメージ

 皆さんは、神谷美恵子さんの『生きがいについて』という本を読んだことがあるでしょうか。神谷さんは、ハンセン病療養施設のお医者さんで、ハンセン病の患者さんたちに寄り添うなかで、その方々が、徐々に視力や皮膚感覚を失っていくという絶望的な状況にあってもなお、希望を失わずに生き抜いている姿を目の当たりにして、「生きがい」とは何かを深く考えました。神谷さんは「生きがい」は言語化できない何かであり、考える対象ではなく「感じられる何か」である、そして他者と比較できない「固有なもの」であると気づきます。また、「生きがい」の問題を考え抜いていくとき、人はいつしか「宗教的なもの」、つまり、既成宗教や宗派の枠にとらわれない「目に見えぬ人間の心のあり方」に近づいていくと言います。

 「あなたにとって生きがいとは何ですか」と問われたら、皆さんは何と答えるでしょうか。多くの人は「趣味に生きる」「仕事や勉強」あるいは「子供の成長」と答えるかもしれません。そんな中、「信仰を深めること」と口にすることはちょっと勇気がいることかもしれません。特に「宗教」という言葉に対して恐怖心や不安を抱く現代社会にあっては。

 しかし、私たちは生きていく中で思いもよらない困難な状況に出会ったり、病気に罹ったりすることもあります。そんな状況の中でそれでもなお私に「生きる価値や意味」を与えるのは、私を超えたより大いなるものに生かされているという喜びや、委ねられる誰かがいるという安心感なのではないでしょうか。

 私たちの救いのために十字架に架けられ死んで復活された主イエス。その主が共にいてくださる喜びをかみしめながら、力強く歩み出したいと思います。