生きがいというと、故黒澤明監督の名作『 生きる 』を思い出します。映画の前半のストーリーは、役所に勤める老年の男が不治の病を知らされることから展開していきます。
死を意識しだした主人公は、事なかれ主義で過ごしてきた役人生活が、すべて無意味に思えてきて悩みます。生きることを真剣に考えはじめ、心底生きがいが持てるものを捜しますが、見つかりません。
歓楽街を巡りますが、心の空白を埋めるものは何もありません。
しかし、苦悩の末、おもちゃ工場の若い女性従業員の言葉から彼は悟るのです。
人のために精一杯生きることこそ、本当に生きることだと。
彼は欠勤していた役所に戻り、以前は見向きもしなかった、町に小さな公園をつくるという平凡な企画に取り組み始めます。
誠心誠意働き、多くの困難にも怯まず、遂にその仕事を成し遂げます。
完成した公園のブランコに揺られながら、彼は満足そうに、生涯を閉じるのです。
映画の後半は、お通夜の席で参列者たちが生前の主人公を回想する場面です。参列者たちは、残り半年間を燃えるように生き抜いた主人公の生き方に感動し、よし自分たちも彼のようになろうと誓い合います。しかし、一夜明けると、普段のだらりとした生活に戻ってしまうのです。
映画を観て、様々なことを考えさせられました。
お通夜の参列者は、もっと充実して生きたいと願っていても、実生活に戻ると力を出せない私のような普通の人の姿かもしれないこと。
しかし、普通の人であった主人公が人生の終わりを見つめることで変わったように、誰でもより良い生き方ができること。
そして、生き方が変われば、普段の仕事や日常生活にも、生きがいは見つかるということです。