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ゆるし

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

 「その日、すなわち週の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人を恐れて自分たちのいる家の戸に鍵をかけていた。そこへ、イエスが来て真ん中に立ち、『あなたがたに平和があるように』と言われた。そう言って、手とわき腹とをお見せになった。弟子たちは、主を見て喜んだ」とヨハネ福音書は伝えています。(20・19~20)

 弟子たちは、ユダヤ人に捕えられる恐怖と、イエス様を見捨てて逃げてしまった罪悪感に打ちひしがれ、家の扉にも心の扉にも鍵をかけておびえていました。そのような弟子たちのもとに現れてくださったのです。手には釘を打たれた痕が、わき腹には槍で突かれた痕がありました。

 なぜイエス様は、弟子たちに自らの傷痕を見せられたのでしょうか。私はそこに、イエス様の赦しのメッセージが込められていると思っています。

 復活されたイエス様のお体の傷は、「あなた方のために傷つくことを厭わないよ」という愛のメッセージでした。合わせる顔がないと思い込み、打ち萎れていた弟子たちに、イエス様から近づいて励まし、優しく包み込んでくださったのです。

 そして「平和があるように」という祝福の言葉を贈ってくださいました。「平和」はヘブライ語で「シャローム」という言葉です。「神と人間の関係が修復され繋がっている状態」を指す言葉です。暗闇をさまよう人間の姿に心を痛められた神は人となり、私たちの罪を担って十字架に架かってくださいました。こうしてシャロームが実現されました。

 イエス様の受けられた傷によって弟子たちは癒されました。(参 一ペトロ2・24)

 イエス様に赦され、愛されていることを確信した弟子たちは、喜びの内に、神の愛のメッセージを宣べ伝える使命を受けて、世界中に派遣されていったのです。