ある知人女性の話です。彼女は優秀なエンジニアで、良い出会いから結婚を決めました。
ところが、結婚直前に男性がお金にルーズなことが分かったのです。借金は男性自身が返済して彼女に害は及ばなかったものの、当然、結婚相手としてふさわしいかを悩むことになりました。男性は反省し、お金については彼女に任せると約束したそうですが、そうなると今度は約束が守られるかが心配になり、知人の悩みはさらに深くなったのでした。
そんなとき、同じくITに携わる既婚女性の友人が、彼女にこういったのです。
「結婚前にバグが分かって良かったじゃない。あなたが彼を愛しているなら、そこをフォローしていけばいいのよ」
バグとは、コンピューターのプログラムの欠点のこと。これを修正してバージョンアップすることで、ソフトが進化していくわけです。お金にルーズという重大なバグを発見した男性とどうかかわるかの選択を迫られた知人は、約束を信じることにして結婚を決断したのでした。
社会経験を積むにつれて男性の金銭感覚も育ち、彼女が顛末を語ってくれたころにはすっかり夫婦円満になっていました。
彼女の大らかさと決断力には脱帽しました。お金にルーズな夫の約束を信じるということは、それまでの行ないを赦したということです。結婚前にそんな大変なバグが見つかったのに。
この話から、私は自分自身のバグについて考えさせられました。人を赦したときの印象は、赦してもらったときより強くなりがちです。けれど、私たちはそれぞれにバグを抱え、赦してもらっているのです。
赦したり赦されたりバグを修正し合ったり。それが生きることなのでしょう。