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委ねる

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 日常生活の中で、「委ねる」という言葉はあまり使われないような気がする。よく使われるのは「任せる」という言葉だ。「あなたの判断にお任せします」とか「プロジェクトの責任者を任された」などと言うのをよく聞く。

 「委ねる」は同じ意味の言葉だが、「任せる」に比べ、相手に頼る度合いが大きい。相手に指示したり、条件をつけたりせず、すべてを託すのである。ビジネスの世界では、「あなたに委ねます」という言葉は、リスクが大きすぎて、使われないのかもしれない。

 ところが、この「委ねる」でなければならない、「任せる」ではどうしてもダメだ、という場合があるのである。

 詩篇55の23に「あなたの重荷を主に委ねよ。 この方はあなたを支え 正しき人を揺るがせることはとこしえにない。」という詩行がある。

 重荷が負いきれなくなったら、主に託しなさい。主はいつもあなたのことを心にかけておられるから、喜んで支えてくださる。心正しい者の信仰心を揺るがすようなことは決してなさらない。という意味だと思われるが、遠くから声が聞こえてくるような詩行だ。

 悩みや不安の荷物は不思議なことに、重いほど下ろせない。一人で担いだまま迷い、潰れそうになっている。

 「委ねる」とは、長い間悩んだ人が最後に主のもとにたどり着き、重荷を手放す、その瞬間の安堵を表す言葉ではないだろうか。主が心にかけてくださっていることを信じ、自分のすべてを主に預ける、その喜びも「委ねる」だ。そうすれば、待つことができるのである。

 「委ねて」空っぽになったはずの自身に何かが与えられるのを。