旧約聖書のルツ記をとおして、神の栄えについて考えてみます。
紀元前十一世紀頃カナーンに飢饉があり、エリメレクは妻ナオミと息子たちを連れてベツレヘムからモアブの野に移り住みます。夫が亡くなり、ナオミに二人の息子が残され、彼らは成長して結婚します。十年後息子らも死に、女性たちがとり残されます。ナオミは故郷へ戻る決心をします。ルツは途中で義母から自分の故郷に帰るよう諭されると、告白します。
「あなたの民はわたしの民 あなたの神はわたしの神。あなたの亡くなる所でわたしも死に そこに葬られたいのです。」(1・16~17)
ベツレヘム到着後、ルツが落穂を拾っていると、地主のボアズが畑で穂を摘むよう勧め、水や食物を与えます。ルツはナオミに従い、ボアズがナオミの土地を買い戻す権利のある親戚であると告げ、ボアズに一族の保護を願います。ボアズは土地を買い戻し、ルツと結婚します。
この物語では、人々がみな他の人に向けて真心を示します。ナオミがルツの幸せを願い、ルツが義母を心遣い、ボアズも二人に情けをかけます。持てる者が正しい仕方で持たぬ者と分ち合い、持たぬ者が更に奪い取られた者を支え、仕え、与え尽そうとします。
このイスラエルの存続を記す書には、民族を越えた視野で、異邦人、女性、やもめを救う物語が語られます。ここでは飢饉、食糧難、家族との死別といった過酷な現実が突きつけられます。それでも、あえて麦の穂を寄留者や貧者に残しておく習慣や、やもめを救済する制度を背景に神の善き心がそのまま映しだされます。神の栄えとは神のいのちが人々の間に顕れること、神の心がこの世に救いとして実現されることなのでしょう。