最も忘れられない日は、ダウン症をもつ息子の周が10歳になった誕生日でした。毎年、誕生日は嬉しいものですが、ゆっくりとした成長を重ねる息子の子育てに奮闘する妻と共に歩んできた、山あり谷ありの道を思うと、感慨を覚えました。
バースデーケーキのろうそくの火を吹き消せない周をパパとママの間に座らせ、手をつないでお祝いの歌を歌い、私が火を吹き消しました。気持ちは伝わるようで、部屋の明かりがつくと無垢な笑顔で私たちを見つめ、その瞳は手のかかる苦労を吹き飛ばすほどの輝きでした。
命を授かる喜びをしみじみ感じ、〈子どもには皆、神様から与えられた〝宝もの〟が宿っている〉と、改めて気づきました。
子育てには、厳しさも必要です。しかし、神様が子どもに与えた宝ものである個性と長所をほめて育むことは、とても大切だと思います。
生まれて間もない頃から、息子の満面の笑みは私たち夫婦を、そして、ご縁のある方々の心を癒してくれています。そのような瞬間に出会う時、私は〈ダウン症をもつ周には、私以上に幸せを感じ、伝える能力があるのでは――〉と感じます。
この10年間で、特に忘れられない思い出は、息子の保育園の卒園式で見た、若い女性保育士さんの美しい涙です。私が迎えに行くといつも、息子の手をギュッと握りながら、共に歩んでくる先生の姿が思い出されます。保育園での最後の日に、周を見つめる先生の目に浮かぶ涙からは愛情がひしひしと伝わり、感謝したものでした。
10歳になった息子は、無数の温かな手により育まれてきました。これからも多くの方々に支えられながら、息子らしい道を歩んでゆくことを想うと、私の胸には深い喜びが広がるのです。