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安らぎ

中井 俊已

今日の心の糧イメージ

 ずっと前に観たアスミック・エース映画、『くちびるに歌を』は長崎県五島の中学校や教会、美しい自然が舞台となった青春映画でした。

 この映画には、自閉症の青年が脇役で登場します。
 中学3年のサトルの兄です。彼は工場で働いていて、サトルは学校帰りに一人では帰れない兄を工場まで迎えに行くのが日課です。
 意外にも、サトルはそれを嫌がっていません。学校の宿題として書いた15年後の自分への手紙には、兄のおかげで「自分には使命がある、存在する意味がある」との思いが綴られていました。

 また、サトルの同級生の少女ナズナが、「自分は生まれてきて良かったのか」と苦悩しているときに、この兄が重要な役割を果たします。

 最後の合唱コンクール県大会の後にも、感動的な場面がありました。合唱中に邪魔をすると懸念され、会場に入れなかったサトルの兄のために、大会後、その場に居合わせた他校の生徒たちも、皆が心を一つにして合唱するシーンです。自閉症の青年の存在がまわりの人々の優しさを誘引し、互いに結びつく起点となり中心となっていたように感じました。

 映画を観て、現実に私たちのまわりにいる障がいを持つ人たちも何かその人自身の役割があるように思えました。

 まわりの人と違う言動があるかもしれません。優秀ではないかもしれません。ときどき、困ったことをするかもしれません。
 けれど、その人も「いてくれて良かった」という存在であるはずです。

 その人の存在自体に安らぎを感じることもあるでしょう。なぜなら、その人も神様から愛されて生まれてきた子どもですから。

 障がいをもっていてもいなくても、私たちが互いに寄り添い、大切に思い合い、助け合っていくことを神様はお望みです。