ゴリラ研究の第一人者、山極壽一さんによると、ゴリラは「グフーム」といううなり声で挨拶をしますが、さらに相手の目を覗き込むことで相手を遊びに誘ったり、食べ物をねだったりするのだそうです。そんなゴリラのコミュニケーションは、共感に基づいているといいます。
ここ数年コロナ禍で、大きな声で元気に挨拶を交わすことが難しくなりました。マスクで半分以上顔が隠れた状態で過ごす日々が続く中、相手の目をよく見ることで、相手の気持ちを受けとめようと無意識に努力してきたように思います。働いている小学校でも、朝、子どもたちの挨拶は会釈だけで、全然声を出さないこともあります。でも、しっかりこちらの目を見てくれると安心します。目の輝きを通して、「おはようございます、今日も元気です」という、空気を震わせない挨拶を受け取ります。
目は口ほどに物を言うといいますが、人の気持ちは、音声となった言葉だけでなく、むしろまなざしに深く込められているように思います。そして、相手のありのままの気持ちを受けとめられるのは嬉しいものです。それが喜びならばもちろんですが、たとえ悲しみや怒りなどのネガティヴな思いでも、率直な気持ちを込めて伝えてくれることが、コミュニケーションを豊かにしてくれます。
子どもたちの目から発せられる挨拶は、彩り豊かであざやかな色をしています。晴れやかな気持ち、じめじめした気持ち、いろんな気持ちが込められています。気持ちは、あらわしてくれるから受け取れるし、そこから共感や絆も生まれます。
マスクをまだまだ手離せない生活が続きそうですが、目は離さずに、気持ちを受けとれるようにしていたいと思います。