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挨拶

森田 直樹 神父

今日の心の糧イメージ

 「挨拶」と聞くと、聖書のお話の中で、天使ガブリエルから聖母マリアへのお告げの場面を思い浮かべる方が多いかと思いますが、今回は、あえて、復活されたイエスさまご自身の「挨拶」について考えてみたいと思います。

 イエスさまが十字架の上で亡くなられた後、弟子たちは恐怖と不安のどん底にいました。それは、先生であったイエスさまが反逆者として十字架で処刑されてしまい、次は自分たちの番かもしれない、と恐れていたのです。聖書にも「弟子たちはユダヤ人を恐れて、自分たちのいる家の戸に鍵をかけていた。」と記されています。(ヨハネ20・19)

 ところが、そんな恐れの真っただ中にあった弟子たちの真ん中に、イエスさまが復活されて立たれます。そして、「あなたがたに平和があるように」とおっしゃいます。(同)

 イエスさまの挨拶は「平和があるように」です。この平和は、武力や圧力で抑え込んだ結果訪れる平和なのではなく、神さまとの深い一致の中で、何事が起ころうとも、心に平安をもたらしてくれる平和です。

 おそらく、イエスさまが生きて活動されている時も、このように挨拶されていたのではないでしょうか。病気の人たち、障碍を持つ人たち、そして、社会から排除されていた人たちに対して「平和があるように」と挨拶されたのではないか、と私は思います。

 一人一人が抱える困難や病気、苦しみを前にして、それでも「平和があるように」とイエスさまはおっしゃったのです。

 このイエスさまの言葉にならって、私たちも「平和があるように」という言葉を私たち自身の挨拶の言葉にしていきたいと思います。お互いに支え合い、助け合う気持ちと共に、周りの人たちに平和をつなげていきたいと今、切に願っています。