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挨拶

林 尚志 神父

今日の心の糧イメージ

 3月のこと。坂を上ってくる男性が桜の枝を見つめて一呼吸ついていました。

 「未だでしょ?」と声を掛けると、「ですね。」と微笑み、上って行かれました。おやっ、一瞬蕾が微かに動き膨らんだように感じました。

 程なくもう一人の男性が上ってきて、下っていく私に、これまた一息をつきながらにっこりされました。「大変ですね。きついでしょう。 しかし良い天気ですね」と応えると、「そうですね、歩かないと足が鈍って。」と少し息を弾ませ上って行かれました。

 「ですね」と「そうですね」の返事の違いの響きに、二人の年齢の違いを思いましたが、それより、何か辺りがまた明るく、空の青さが増したように思えました。

 だいぶ大袈裟ですが、知らない人でも挨拶して言葉やにっこりを交わすと、地球も宇宙も変わる、そんな思いに心の奥が嬉しくなります。

 「お早うございます」「こんにちは」「こんにちは、あっ、もう今晩はですね」。さりげない挨拶ですれ違う時、なにも返事がない時も、すれ違って少したって微かにご挨拶が返ってきたりします。時には緊張が生じて、いけない失礼したかな、など感じたりします。なんの返事もない時はそばの木や花が、空気が土や建物が、空振り挨拶に応えてくれるので、地球や宇宙は優しいなと感じ、生き方に深みが刻まれます。

 挨拶は相手の未知の世界に入らせて頂く、ときめきの瞬間ですね。

 返事が無くても大丈夫です。返事がない時、出来ない時もあります。でも一瞬の心の向け合い、感情の流れなど、無二の存在と存在が交わる瞬間です。

挨拶は宇宙を変える、人類を変える。新しい創造への参加だ!と大袈裟に心軽やかに人生を歩むことにしたいです。

「お早うございます。今日の良い日に!」