日本語には、知らない人に、いきなり会ったときに述べる挨拶の言葉がないように思います。英語ならhello! 、スペイン語なら hola! と叫んで、だれに対しても気軽に挨拶を交わせます。日本語には、そのように気軽に呼びかける言葉がないようです。
「ハロー」は、日本語では「モシモシ」ということになりますが、この「モシモシ」は、英語の軽やかな「ハロー」とは違うように思います。
ハローは、知らない同士でも、「ハロー」「ハロー」で OK です。
しかし「モシモシ」は、そのようには、いきません。「モシモシ!」と呼びかけられますと、だれしも、何かあったのではないかと、特別な関心を持って振り向き、次の言葉に耳を傾けます。「モシモシ」の言葉の威力かもしれません。
「モシモシ」は、電話の専門用語と言ってよいくらい、電話で頻繁に使われます。それ以外で使われた場合の「モシモシ」は、知らない人への呼びかけと言えます。例えば「モシモシ、なにか、落としましたよ!と言った類です。
知っている人に「モシモシ」は、使えません。ソーシャルディスタンスが存在するとき、つまり、人間関係が疎遠であるときに限り使える、「モシモシ」です。人間関係が緊密であれば名前を呼ぶか、素朴に、「ちょっと!」で済みます。
尊敬する恩師や先輩に対しては、敬意を表すため、相手をあえて第三者扱いにし、ソーシャルディスタンスをつくることによって、より丁寧な言葉遣いで「モシモーシ」を使うこともあり得ます。また、親しさを表すため、後輩に対してわざとへり下り「モシモーシ」と呼びかけることもありますが、ふざけた感じがしないでもありません。