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レジリエンス

シスター 萩原 久美子

今日の心の糧イメージ

 大きくなるにつれて様々な困難や壁にぶち当たることが多くなる。小さい頃は、楽しかった毎日が、苦しくもがく日々に変わることがある。だんだんと年を重ね、成長してくると、社会的な生活範囲も広がり、両親・家族以外の人との関わりも増えてくるからだろうか。

 人との関わりが増える時、私のまなざしは「私」から「他者」へと向かい、そして、「誰かのために」生きようとする時、そこに様々な困難や挫折が生じるのかもしれない。あるいは、そうした中で、自分自身が見えてくるとき、その弱さや至らなさに、自分のどうしようもなさを感じてしまうのかもしれない。または、自分の目標に向かって邁進している時、自分の能力を超えた壁に立ちすくんでしまうのかもしれない。

 使徒パウロは言う「私は弱い時にこそ強い」。(参 2コリント12・9)

 様々な困難や逆境にあっても、自分の能力の限界を嘆くことがあっても、それらから逃げずにしっかり向き合ったとき、いつしかそれが恵みに変えられるときが来る。

 否定的な感情に向き合うには勇気がいるし、傷つくこともある。時には自分の限界を認める必要もある。だけど、自分の弱っている心に向き合う時、誰かの小さな心遣いに敏感になってくる。誰かの小さな手助けに感謝できるようになってくる。「私」が「他者」へ向かっているように、「他者」も「私」に向かって温かいまなざしを送ってくれていることに気づかされる。そして、今まで気づかなかった小さなことに気づくことで、見方が変わり、そしてそっと背中を押してくれる力を感じていくのかもしれない。

 見方を変える力、それは逃げではない。それは、困難や弱さに適応していくための強さでもあると、私は思う。