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堀 妙子

今日の心の糧イメージ

 「ねえ彩花、今日の空の色は何色?」という、香織の復活を告げる言葉で終わる劇を上演した。

 私はその頃カトリック系の女子大で、幼稚園の教諭を目指す学生に演劇を教えていた。それ以前、12人の子どもたちと共に劇団『空の鳥』を主宰した経験があり、学生たちの他者に共感する能力を育てたかったのだ。戯曲の書き方を説明し、一幕物の台本を作ってくる宿題を出した。次の週、学生は戯曲を書いてきた。

 ある学生が、"リサ・フィッティバルディ"という女性が、失明し、夫の協力で絵を描き始めたという実話をもとに戯曲を書いてきた。

 タイトルは『まぶたの筆』。設定は画家志望の香織という高校生が交通事故に遭い、父親は彼女を庇って死亡。香織は全盲となる。親友の彩花が再び画家になる希望を香織に抱かせる復活劇だった。

 事故後、彩花が香織を美術室に連れて行くと、イーゼルに立ててあるキャンパスに前もって穴を開け、位置がわかるようになっていた。香織はそれを指でたどる。彩花は香織に青空に虹の橋が架かっている絵を描いてほしいと願う。

 彩花 「私が色を用意する。まずは水しぶきで遊ぶ魚みたいな、透き通った空の色、 そんな色を作りたいんだけど...。」

 香織 「えっ...、...青と白を7対3の割合で混ぜて、あと黄色を入れると、いいんじゃないかな...。」

 香織はキャンバスの穴をたよりに筆を運ぶ。そして二人の魂と魂の共鳴によって、晴れた空に架かる虹が完成する。彩花は「香織のまぶたの筆になってあげる」と約束する。

 絵が完成し、冒頭の「ねえ彩花、今日の空の色は何色?」と言う香織の台詞で幕となる。この台詞こそ、イエスが時を超えてこの世での人間復活を示してくださっているのだ。