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松尾 太 神父

今日の心の糧イメージ

 時は、いつのまにか過ぎていきます。

 時計を見ている間に、スケジュールをチェックしている間に、失敗しないようにと準備に心を砕いている間に、時は川の水のようにとどまることなく流れていきます。時は見えませんが、時と時の間なら、わたしたちは知っています。でも、ときどき、時を知りません。

 子どもたちは、絵を描き始めると、時を忘れて描き続けます。「もう時間です」と止めなければ、気が済むまで一生懸命筆を走らせ、絵の具を塗り重ねている子もいます。子どもたちの頭と心と体はひとつになり、時を忘れているように見えます。そして、時を忘れてしまうことで、むしろ充実した時をつくりあげています。

 代わり映えしない毎日を繰り返す中で、心が死んでいくのをふと感じるとき、どんな些細なことでもいいので、時を忘れて何かに打ち込んでいた瞬間を見つめてみます。すると、同じことの繰り返しだと思っていた日々の生活や仕事が、色鮮やかに輝いてきます。何気ない日々を繰り返しながらも、やはり必死にその時その時をつくりあげていたことに気づくのです。

 だから、子どもたちが見せてくれる作品は、いのちの喜びにあふれています。時を意識しない子どもたちこそ、まさにその時を生きています。過去のことや先のこと、時間があるとかないとか、自分の都合をあれこれ考えることなく、夢中でつくりあげたものは、表情も色合いも生き生きとしています。時を忘れてつくりあげたものを通して、時をこえるいのちが輝きます。

 それは、時をこえる方が、わたしたちにいのちを与えてくださることを、新たな心で見出すからではないでしょうか。「神はすべてを時宜にかなうようにつくり、また、永遠を思う心を人に与えられる。」(コヘレト3・11)