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シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

 過去をどんなに悔やんでも、あるいは未来についてどんなに心配しても、私たちは、過去に戻ることも具体的な未来を予想することもできません。私たちに与えられている時は、「今」というこの時だけです。

 「今」という時を一瞬一瞬生きているからです。

 そう考えると、「今」、この時、自分はどうあるか、何をするかが、とても大切なことのように感じます。私にも、学生時代、もっと真面目に勉強しておけば、あの時、あきらめずにチャレンジしておけば、というような後悔がいくつもありますが、いくらそのように考えてみても過去を変えることはできません。考えるだけ無駄のようにも感じます。しかし、今、過去をふり返る時、過去から学び、違った視点で今の時を受け取り、未来を変えるために今を生きることをゆるされています。過去の失敗や過ちをふり返って、今、行うことを選択することはできます。

 恐れのあまり、十字架への道を歩むイエスを見捨ててしまった弟子たちは、イエスを裏切ったことへの後悔、悲しみやうしろめたさでいっぱいになりましたが、復活されたイエスと共に新しい「時」を生きる者に変えられました。彼らは臆病で惨めな過去の自分を知りながら、変わらないイエスの愛と眼差しに触れて、過去に自分を閉じこめるのではなくイエスの愛の招きに応え、今、この時、回心と新しい道に呼びかけてくださるイエスの息吹を受けて立ち上がり、主の復活のよろこびを伝える者に変えられました。

 イエスの死と復活の出来事は、私たち一人ひとりが過去から学び、古い自分に死んで、ある意味で永遠に続く「今」というこの瞬間を新しい心で主と共に生きるようにという私たち自身の復活への招きなのです。