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中野 健一郎 神父

今日の心の糧イメージ

 我が部屋の窓の外には、左手に天主堂、真下には、見晴らしのよい開放的な公園が広がっています。昨年、小さなアスレチックやボルダリング、滑り台などが作られ、ミニコンサートもできる、リニューアルされた公園は、以前にも増して、親子連れや年輩の方でにぎわう、憩いの場になりました。子ども同士や親子が一緒に遊ぶ姿を目にすると私も安らぎ、いつまでも眺めていたくなります。

 あるとき、小さな男の子が、お父さんとキャッチボールをしていました。その姿を見たとき、私の脳裏に、幼い時、父から愛された多くの記憶が、昨日のことのようによみがえってきました。補助なし自転車の後ろを父が支え、乗る練習をしたこと、海で泳げず、私が父にしがみついたこと、父が幼い私の写真を箱一杯持っていたこと、晩年ドライブしたときの笑顔などなど。

 「時間論」と呼ばれる、聖アウグスティヌスの考え方に、「あなたの今日は永遠である」というものがあります。時間は神さまが造られたもの。でも時を超えて、「愛は決して滅びない」(1コリント13・8)もの。過去の愛された記憶は、私の今を支え、生かす基盤であり、永遠の宝物、未来へ向き合う原動力だと感じます。ですから、「愛された記憶」を胸に、「今」の時を、愛をもって精一杯生きるなら、私たちは、永遠の命を生き始めていると言えると思います。

 20代の頃の悩める私に、あるシスターはおっしゃいました。「神さまは過去を問わない。私の手の中には未来はなく、あるのは今のこの時だけ。以前のことは気にせず、頑張りなさいね」と。

 復活されたキリストとともに、永遠へとつながる今の「時」を、愛をもって精一杯生き切ることができますように。