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サステナブル

松尾 太 神父

今日の心の糧イメージ

 アフリカのズールー語に、「ウブントゥ(ubuntu)」という言葉があります。その心は「みんながいるから、わたしがいる(I Am because We Are)」です。

 この、わたしはみんなとのかかわりの中でこそわたしなのだ、という感覚に近い、「お陰様」という言葉が日本にもあります。でも、昨今わたしたちが「おかげさまで」という時、たいていは、自分によくしてくれる人たちへの感謝にとどまっているかもしれません。

 「ウブントゥ」は、意見が合う人も合わない人も、みんなのことを大切にする生き方です。コミュニティのきずなの方が、個々の議論よりも大切です。それは、全体のために個人を犠牲にするということではありません。「ウブントゥ」は、相手の目の奥を見つめ、相手から見つめ返されることです。共感と信頼に裏打ちされて、共通理解を深め、分裂の傷にいやしをもたらす、あたたかい交わりです。その交わりは、動植物や山や海にも広がるものです。その心は、教会でミサを祝う心とも重なります。

 子どもたちと接するとき、自分を信頼してくれているかどうか、目を見ればわかります。こちらの表情や態度で、子どもたちの顔はくるくると変化します。嬉しそうにしたり、不安そうにしたり。一方で、子どもたちの顔を見ながら、自分の顔も、色々に変わっていきます。相手の顔を見ながら、笑顔になったり、しかめっつらをしたり。子どもたちからかたち造られている自分がいることに気づきます。

 人や自然を変えようとするばかりでなく、他者によって自分がかたち造られるのをよしとするとき、だれも取り残されない世界への、新たな地平がみえてくるように思います。