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サステナブル

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 知人が二人、ほぼ同じ時期に家を建てた。二人ともそれぞれ裕福で、自分たちの住む家は既にある。余分に持っている土地に家を建て、他人に貸して家賃を収入にしたのである。一人は出来るだけ安く建物を建て魅力的に見える工夫をして、高い家賃を取ったので、大きな収入になった。もう一人は高い費用をかけて家を造り、家賃は安くしたので、利益は少なかった。

 ずいぶん違うものだと思い、聞いてみると、後者の知人は、子供と孫の世代に譲れるよう、長持ちする家を建てたということだった。家賃が手頃なので、入居希望者が多く、収入は安定しているそうである。

 現在、サステナビリティ即ち持続可能性という考え方が、各分野で取り入れられている。将来世代のために、地球環境や資源を保持し、持続可能な社会を作るのが目標であるという。

 子どもたちの資産にもなる家を建てた知人は、まさにサステナブルで新しい時代の考えを実践していたことになるのではないだろうか。知人は家族への愛情を地上に残したのである。

 過去においては、目先の利益を優先した開発が、土壌を汚染し、森林を破壊してしまったこともある。そんな環境に住み、対処するのが自分の大事な子孫だ、と想像していたら、あるいは違う結果であったかもしれない。

 将来の世代に配慮し、現在においては、他の人々への影響に配慮することが、これからの仕事には求められるのだろう。私たちはやっと、思いやりのある世界に近づき、造りつつあるのだ。まずは身近な人々への思いやりから始めたい。思いやりは連鎖する力を持っているから。不思議なことに。