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共生社会

松尾 太 神父

今日の心の糧イメージ

 小学校の運動会での一幕です。2年生のAちゃんが「C子ー!D子―!がんばれー!!」と、目の前を疾走する6年生を応援していると、前にいた同級生のBちゃんが、突然くるっと振り返り、「Aちゃん、呼び捨てはだめって先生が言ったよ!」とするどい口調で言いました。すると、Aちゃんは「えっ、でも、6年生がいいって言ったもん」とおっかなびっくり言い返しましたが、みるみるうちに涙目になってしまいました。それを見たBちゃんは困った顔をして、それ以上何も言いませんでしたが、Aちゃんは涙が止まりません。「だって...、だって...」としゃっくりしながら繰り返しています。

 Bちゃんは正しいことを言ったし、Aちゃんにも悪気はありません。「そうだね」とBちゃんをなだめつつAちゃんを慰め、「Bちゃん、もうAちゃん大丈夫やけん、応援しよっか」と、前を向かせて数秒後、再びBちゃんがくるっと振り返り、Aちゃんの方へ右手を伸ばしました。思わず止めようとした次の瞬間、Bちゃんは、まだぐずっているAちゃんの頭を、よしよし、としたのでした。すると、Aちゃんも泣き止みました。

 その時、わたしは恥ずかしくなりました。実は、わたしは、BちゃんがAちゃんをたたいたりするのではないかと一瞬心配したのです。

 自分は間違ったことは言っていないと知りながら、責められて泣いてしまったAちゃんの頭をなでるBちゃんのやさしい勇気に、心が締めつけられる思いがしました。

 善いことをしようと望みながらも、自分に欠けている何かを、このこどもたちに教わったように思いました。

 「見よ、きょうだいが共に座っている。なんという恵み、なんという喜び。」 詩編の言葉です。(133・1)