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共生社会

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 現代社会では好むと好まざるとを問わず、外国人と共生して生きていかなければなりません。その場合、皆が仲良く平和に暮らしていくためには、何らかの知恵がいります。

 それが、「郷に入っては、郷に従う」という言葉です。この言葉の出典は、中国の『荘子』ですが、大昔のローマ帝国がその属国を統治した時のやり方がそうでした。

 地球上には多くの人種や民族が住んでいますが。それぞれの国や地域には、それぞれ固有の歴史や文化があり、また風俗・習慣も違います。それに順応する覚悟がなければ、外国に移住すべきではありません。

 私は50歳の時、大学から海外研修の予算を貰って、世界を大雑把に横断旅行したことがあります。アメリカの西海岸、サンフランシスコやバークレーには少し長く滞在しましたが、その後は、横断して東部に行き、そこから西ヨーロッパ、イスラエル、ギリシャ、東南アジア、最後はフィリピンへと回りました。その体験で悟ったことは、まず現地の言葉を少し覚えること、その土地の食生活に少し慣れること、また彼らの風俗・習慣を尊重し、それに従うことでした。自国の文化や価値観を振り回すことは禁物でした。

 私はイエズス会という修道会の神父で、海外に行くと、大きな町には大体、インターナショナルハウスがあって、そこに泊まりましたが、諸外国から来ている若い神父たちとは大抵、英語で語り合っていました。

 彼らは自国の文化や歴史に誇りを抱いていますが、滞在している国の風俗や習慣を尊重しているのを見て、感心したものでした。懐かしい想い出です。

 互いに尊重し、共に生きていく社会を目指しましょう。