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共生社会

中井 俊已

今日の心の糧イメージ

 京都に住んでいた頃、数々の著名な観光地よりも好きな場所がありました。

 ちょっと変わった図書館と喫茶店です。そこでは特別支援学校の学習の一環として、知的障がいを持つ高校生たちが働いていたのです。

 仕事柄、私はよく本を借りに行きました。行くだけで、生徒たちは「おはようございます」「こんにちは」と気持ちよくあいさつをしてくれました。

 本の貸出・返却の手続きは、先生が横について、係の生徒がコンピュータを操作してやってくれました。ぎこちない動作ですが、一所懸命でした。「ありがとうございます。○月○日までにお返しください」などと、きちんと手渡してくれるのですが、ありがたいのはこちらだと、いつも思うのでした。

 喫茶店は手作りで温かみのある店でした。コーヒーや紅茶やお菓子などを非常に安価な値段で提供していました。

 「しばらくお待ちください」「お待たせしました」「ありがとうございました」そんな、普通の喫茶店でもよく聞く言葉に、新鮮な響きと温かみを感じました。コーヒーを運び、テーブルの上に置く当たり前の動作が、器用ではないけれど、心がこもっていて、好感がもてました。近隣のご老人たちの憩いの場にもなっていたようです。もし、今住んでいる地域にも同じような場所などがあれば、私はやはり好んで通うでしょう。

 障がいを持つ人々が社会で働いて自立していくのは、難しいと聞いています。でも、彼らが広く社会で活躍できるようにと、願わずにはいられません。

 私たちは誰もが、神様のみ前で、弱く、欠点のある、小さな者です。

 だからこそ、互いに助け合い、共に生きることで、深い慈悲と豊かな恵みをいただけるのです。