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新たな出発

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 毎年正月になると、私は高浜虚子の句を思い出します。

 去年今年貫く棒の如きもの

 私はこの句の力と正しさにエネルギーをチャージされる思いなのです。

 正月の季語には初日、初空、初旅などがあります。自然界のものやその日の行動に「初」を付けて正月の季語にしているのです。年新た、淑気など、正月特有の雰囲気を指す季語もあり、俳句では、正月は年間の季節とは別に分類されるほど特別な、「一つの期間」なのです。

 しかし実は、正月とは私たちが前年の経験のうちでリセットしたいものを改めたいという気持ちを込めて作った「期間」にすぎないともいえるでしょう。現代の日本では、正月は太陽暦の1月1日ですが、旧暦でこの日は何の意味も持ちません。自然界でも、「初」の一文字がなければ空も太陽もいつものままの存在です。虚子はこうした連続性に着目したうえで、新しい出発の中にも一本通る「芯」があり、それは保たれるべきだと示唆したのかもしれません。

 私は毎年、大晦日に1年を振り返る日記を、元旦には新年への思いを綴る日記を付けています。けれどそれらは、実は「中間見直し」でしかないことにも気付いています。毎年必ずまっさらな新しいことが始まるとは限らないからです。

 でも、前年から続いていることの中には必ず、何かしら新たなものが加わります。これもまた、新たな出発ではないでしょうか。さらにいえば、まったく新しいことも、実は蓄積の上に始まっているのです。貫く一本の棒に新たなものを加えることができたとき、それは新たな出発となるのでしょう。

 出発にせよ貫く行動にせよ、神様がいつもともにいてくださることを信じて、進んでいこうと思います。