▲をクリックすると音声で聞こえます。

誕生の喜び

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 「最後の審判」や復活など、聖書には死後のことが色々と書いてある。だが、残念ながら、わたしたちが生まれる前にどこにいたのかということは書かれていない。わたしたちはどこからやって来たのか、想像力が膨らむところだ。陶芸家の手から茶碗が生まれてくるように、人間は神様の手の中でこねられ、形を与えられて生まれてきた。わたしはそんな風に想像している。

 神様は最高の芸術家だ。作品を創るときに、決して妥協することはない。どの作品にも愛情を込め、これでもかというくらい完璧に仕上げてこの世界に送り出す。わたしたちは、誰もが神様の最高傑作なのだ。失敗作は1つもない。もしわたしたちが自分に不満を持ち、「わたしなんかダメな人間だ。生まれてこなければよかった」と言えば、神様はきっと悲しまれるだろう。

 神様という芸術家は、無意味なものを決して創らない。必ず、何か使命を与えてこの世界に送り出す。生まれてきた以上、わたしたちの人生には必ず意味があるのだ。人生が思い通りにならないときや、大きな失敗をしたとき、わたしたちはつい、「自分の人生には意味がない」と考えてしまう。だが、それは単に「意味が分からない」ということであって、「意味がない」ということではない。神様がこの世界に送り出した以上、わたしたちの人生には必ず意味があるのだ。

 ときどき、「わたしは、誰からも望まれずに生まれてきた」と嘆く人がいる。だが、そんなことはありえない。神様が望まなければ、誰もこの世界に生まれてくることなどできないからだ。わたしたちは誰もが、神様の愛の中から生まれてきたかけがえのない生命であり、神様の最高傑作。そのことを忘れないようにしたい。