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授かったもの

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 人生を生きる内には、いくつかの大切な宝ものが与えられるのではないか、と思うことがあります。46歳の私なりに実感するのは、その宝は自力というよりも、懸命に生きながら天が望まれた時に与えられる、というものです。私にとっての宝を思い返すと、在りし日の祖母が私に残してくれたものが二つあることに気づきます。

 一つは、20歳を過ぎた頃、「詩人になりたい」と考えていた私に、祖母がテレビで観たある詩の朗読会を教えてくれたことです。都内で毎月、詩人たちが集うこの朗読会に通うことが、私にとっての詩の道の始まりでした。詩の朗読は「ポエトリーリーディング」という米国発祥の文化として日本でも認知され、朗読会が開催されるようになり、私も主宰しました。詩の朗読を通じて大事な仲間とそれぞれの思いを分かち合う、かけがえのない時間を共有しました。

 現在はコロナ禍で朗読会を行うことが難しい状況のため、インターネットの動画配信で「ぽえとりーサロン」という番組を始めました。ご縁のある詩人との語らいや朗読で、詩とその詩人の魅力を伝えています。

 もう一つの宝は、祖母の影響で私も信仰を与えられたことです。洗礼を受けてから十数年が経ちましたが、目には見えない神様の導きと内面の歓びを頂き、日々反省しながらも、「神様の御手の上に生かされている感謝を胸に、今日を生きたい」と思っています。また、洗礼を受けたことでカトリック作家の遠藤周作を敬うようになり、「人の心に届く詩を書きたい」という願いが、今も育まれています。

 在りし日の祖母が残してくれた「詩と信仰」という二つの宝を大切にしながら、家族や日々出会う人々と人生の旅路を歩んでゆきたいです。