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ともに生きる

崔 友本枝

今日の心の糧イメージ

 世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」をテレビで見た。どこの港にも立ち寄らず、一人でヨットを操縦して孤独や危険に立ち向かいながらスピードを競うものだ。約80日間かかる。

 2020年のレースでは選手が一人遭難してSOSを発信した。近くにいた4人の選手に、助けが来るまで彼を探すようにと連絡が入った。4人はレースをいったん中断して捜したが、夜になると海は真っ暗になり捜索は困難を極めた。3人は諦めた。だが、一人、最年長の選手が一睡もせずに暗い海の中を探しまわってついに遭難者を発見した。彼をヨットに乗せて温かい飲み物を出している姿に私は胸が熱くなった。救助のために日数が奪われ、優勝は諦めざるを得ないのだ。彼はこう言った。「実は僕も遭難したことがあるんだ」。それを聞いて私は「ああ、これ、これ!」と納得した。

 たとえば、日々の食事に事欠く人を助けようとするとき、かつて自分が貧しさに苦しんだ経験があるとすぐに手をさしのべられる。相手の辛さや不安、混乱がありありとわかるからだ。自分も多くの人に支えてもらったのだから今度は助ける側に回ろう、と自然に思う。出費は惜しくない。状況が改善するまでしばらくかかるから援助を継続するためにもこちらも無理はしない。そして、自力で出来そうになったら手を出すのを少しずつ控えていくのがいい、といろいろわかっている。

 私は生活の労苦や試練は、神さまからの貴重な贈り物だと思う。苦しみ悩み、眠れない夜、泣きながら祈った日々はみな深く心に刻まれる。その体験は、困っている人、苦しむ人と「共に生きる人」になれるように神さまからいただく鍛錬だと思う。