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ともに生きる

西田 仁

今日の心の糧イメージ

 私は小学校2年生の時に米国から帰国しました。当時、同級生から「外人のお友達ってどんなの?」と聞かれました。40年以上前の事なので、町にも海外の方はほとんど住んでいませんでした。そんな時代ですから、小学生の何の悪意も無い、自然な質問だったのだと思います。ただ、それまで海外で過ごしていた私は、強いて言えば自分が外人だったので、「外人の友人」と言う感覚が無く、質問の意図がよく分かりませんでした。実際の大人の社会では酷い人種差別があったと思いますが、幸いに私が通った教室の中では自分がアジア人であることで差別された記憶はありませんでした。教室には色んな国をルーツにした移民がいました。ところが話を聞いているうちに日本の同級生達が言う外人は青い目をした、金髪の白人の事を連想している事を知りました。

 最近は「多様性」という言葉をよく耳にします。果たして本当に多様性を受け入れる国になったのでしょうか。以前に二人の米国からの留学生がいました。そのうちの一人は日系人で、もう一人は白人でした。ある日、二人が駅の自転車置き場で自分の自転車に乗ろうとしたら、日系人の留学生だけが警官から職務質問を受けました。彼は自分のルーツの文化をもっと知りたくて日本を留学先に選んだのに、彼の話では日本留学中によく経験した出来事だそうです。40年前と何も変わっていない事に愕然としました。

 真に多様性を受け入れるということは、まずは己の本質と深く向き合い、周りとの違いや優劣に自分の価値を見いだすことのない自己を確立した上で、先入観にとらわれずに、様々な価値観とともに生きる事だと思います。