「慎ましく」生きるというのは、何事もほどほどが良いという節度ある生活態度のことではないでしょうか。しかし、それには何事も節制するという強い意志が必要です。
人間には生きる上で、また成長する上で、その原動力ともいうべき欲望や欲求があります。卑近な例で言えば、飲酒、飲食でしょう。好きなお酒が出れば、つい飲み過ぎてしまいます。私自身もそういう飲み過ぎの体験があります。食べ過ぎでも、肥満につながり、成人病のもとになるでしょう。それをコントロールするには、強い意志と賢い考え方というか思想が必要であると思います。
昔の逸話ですが、あるとき徳川家康は、側近の家来に向って、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という諺があるが、お前たちはどちらを取るか、やり過ぎることか、足りないことか、と尋ねます。すると多くの家来は、「やり過ぎることを選びます」と答えました。すると、家康は、わしは「足らざるを取る」と答えます。そして。家来たちに語ります。戦いでも日常の行動でも、足りなければ、それを補うことができる。しかし、やり過ぎてしまったら、後で取り返しがつかなくなるだろう。
こうした家康だからこそ、幾多の戦で負けたりしましたが、最後には勝利を得て、天下を取り、末永く国を治めることができたのでしょう。
「過不足なく、中庸を得る」ということは、立派なことであり、理想的なことですが、人生なかなかそうはいきません。その時には、家康に倣って「不足」つまり「慎ましさ」を選ぶ方が賢明なのではないでしょうか。