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心のなごみ

松尾 太 神父

今日の心の糧イメージ

 子どもたちの問いかけは、なぜ心にすっと入ってくるのでしょう。二年生の子が私にたずねました。「ねえ、神父様は、いやな人っている?」「いやな時、どうすればいいの?」眉間にしわを寄せ、真剣な眼差しで、静かな声で、でも懸命に問いかけるその子の姿が可愛すぎて、顔がほころびそうになるのをやっとこらえて、耳を傾けました。その子には、どうしても仲良くできない友だちがいるのでしょう。でも、授業で「よいサマリア人」の話を聞いた後で、なんとか自分もサマリア人みたいになりたいと思ったようです。

 子どもたちの問いかけはまっすぐです。まっすぐ過ぎます。そして、子どものまっすぐなことばは、大人の心の隙間に入って、動悸、息切れを和らげ、冷たくなって今にも止まりそうな心をあたためてくれます。そうか、そう思うんだよね、と話を聞いているうちに、答えを出せていない問いにまた向き合う勇気を、自分自身ももらっています。

 また別の子が、学校の玄関で行き合った時、「BちゃんとCちゃんがどこに行ったか知りませんか」とたずねてきました。「どうしたの」と聞くと、「3人で一緒に遊ぶ約束をしてたのに、2人が仲良過ぎて私を置いて行っちゃったの」とお冠です。「どうしちゃったのかなあ」としか言えないままその場を離れ、しばらくしてまた玄関を通りかかると、例の3人がきゃっきゃっととても楽しそうに遊んでいました。それを見てホッとすると同時に、置いてけぼりを食って不機嫌だったことなど微塵も感じさせないその子の態度に感心しました。

 変わることを恐れず、与えられた僅かな時を精一杯楽しむ子どもの姿に、一人ひとりを本当に慈しむ神の愛が溢れています。