▲をクリックすると音声で聞こえます。

新たな出発

遠山 満 神父

今日の心の糧イメージ

 旧約の預言者エレミヤは、ある日、主なる神から陶工の家に行くように命じられます。陶工は、ろくろを使って仕事をしていました。彼は、粘土で一つの器を作っても、気に入らなければ自分の手で壊し、作り直していました。その時、主の言葉がエレミヤに臨みます。「イスラエルの家よ、この陶工がしたように、私もお前達に対してなしえないと言うのか」。(18・6)

 この数年、私達が体験した事は、この預言の中で語られている事に似ています。それは、形あるものが作られては壊され、また作り直される事の繰り返しです。災害によって家屋が壊され、再建されても、また壊される事があり、為政者によって法の枠組みが壊され、再考されても、また壊される事があり、その繰り返しの最後に、パンデミックによって社会のシステムが壊されました。今、世界は眞に混沌としています。

 このような状況下で苦しんでいる私達に、パウロは希望の言葉を語ってくれます。彼は言います。「キリストと結ばれた人は誰でも、新しく創造された者なのです」と。(2コリント5・17)

 創世記には、原初の世界が混沌としていた事が記されていますが、これは科学の世界でも認められている事です。創世記には、これに加えて、このような混沌としていた世界に秩序を与えられたのが、神であると記されています。それは、神の子であるキリストと結ばれている人が、経験している事、つまり、自分の生活が如何に混沌となっていったとしても、キリストに結ばれているなら、再び生活に秩序を取り戻す事が出来るという事です。

 混沌とした現代世界の中で、多くの人がキリストに結ばれて、新たな一歩を踏み出す事が出来ますように祈ります。