「新たな出発」と聞くと、それだけで気持ちが晴れるような気がする。「出発」も「新たな」も希望を感じさせる前向きな言葉だからかもしれない。
「新たな」つまり「新しい」という語は、いろいろな使われ方をする。新鮮で生き生きとした野菜も「新し」く、今までには存在しなかった斬新なデザインも「新しい」。そして、何かを初めて行うことを「新しい」といいながら、以前あったものを改めて、もう一度始めた場合もまた、「新しい」というのである。
考えていくと、「新たな出発」が初めての出発に限らないことに気づく。過去の経験から立ち上がり、気持ちを切り替えての再出発も新しい出発なのだ。
昨年、友人が転職をした。元の職場より働きやすく、自分に合った会社に移ったので、明るい再出発、リスタートだった。彼女は仕事の役割もよく果たすだけでなく、 心配りも出来る優しい人柄なので、新しい職場でも、き っと周囲の人々をなごませることと思う。窓を開けるように、彼女が一日一日を新たにしていく姿が見えるような気がする。
「その日一日をよい日にしたいの」と彼女は言ったことがある。何ひとつ失敗のない立派な人生を送ろうとすると難しいが、やって来る今日一日を明るく過ごすことなら出来るそうだ。それを続 けていけば、確かに人の一生は明るく輝くことになる。
彼女からは、教わってばかりだ。恩返しと言うほどではないけれど、新たな出発のお祝いに気持ちばかりを贈ろうと思う。優しい色の傘はどうだろうか。窓から陽を入れたくても、冷たい雨が降る日もある。そんな時は、この友情の傘で降りかかるものをよけてくれますように。
祈りを込めて贈りたい。