始めの一歩

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 1・2・3・4・5・6・7・8・9、この中で最も好きな数字はどれですか?というアンケートを友人たちに答えてもらったことがある。最も人気があったのは1で、理由は「1番になりたい」、「1人が好き」などだったが、中に「1は始まりだから」という回答があって、興味深かった。確かに、人間は何かを新しく始めることが好きな生きものでもある。

 思い出せば、入学や入社など初めての世界に入っていく時は、期待と不安で胸が一杯になった。それまでとは違う日々が始まるのだ。頑張ろう、と張り切っているが、未知の世界が不安で心配でもある。この喜びと恐れが混ざり合って、胸が騒ぐのが、一歩を踏み出した時の心境ではなかったろうか。

 また、私たちは思い定めて何かを始めることがある。例えば、大人になってからの習い事や勉強、ボランティアなどがそうだろう。その人の内部の時間が満ちてきて、始めたことなので、外側にある年齢などとというものには関係がない。30代の終わりに定時制の高校に通った人もいれば、60歳を越えて大学に通い、博士号を取得した人もいる。

 始めるとは、自分をゼロの位置に置くことだ。傲りや飾りを捨てて、無心になると、自分自身が開かれていく。すると、最初は小さな泡のように、やがては泉のように湧いてくるものがある。それは静かな喜びだ。世界を迎え入れる喜びだ。

 無心で待っている者に、善きものが与えられないわけがあるだろうか。それは信じられてもよいのではないだろうか。

 新しい年が開かれた。私たちも静かに開かれていく。

み言葉と共に

松村 信也 神父

今日の心の糧イメージ

 2021年ついに延期された東京オリンピック・パラリンピックの年、待ち焦がれたその年が明けました。

 1964年に開催された東京オリンピック・パラリンピックをご存知の方にとって、あの感動をもう一度と期待されている方もいるでしょう。

 あの頃を思い起こす時、オリンピック・パラリンピックの競技の思い出もさることながら、私たちの生活環境が大きく変化した事でした。東京大阪間を新幹線が走る、都内には首都高速が完成、そして白黒テレビの世界からカラーテレビの世界に変わりました。発展と共に日本全体が、それまでの古いものから新しいものへ大きく転換した年でした。

 2021年、世界は大きく変わろうとしています。今年また新たな転換をただ期待するのではなく、むしろ昨年の出来事を教訓として、もう一度根本から人類の問い「生きるとは何か」を、考える年になれば良いと思います。決して失敗を恐れることなく、大いに失敗から学び、明日への希望が見えたとき第一歩を踏み出した証拠です。

 近代オリンピックの提唱者クーベルタン男爵の名言「オリンピックで最も重要なことは、勝つことではなく参加することである。同様に、人生において最も重要なことは、勝つことではなく奮励努力することである。 肝要なのは、勝利者になったということではなく健気に戦ったということである」。大切なのは「平等、協働、謙遜、そして共感共有」ということではないでしょうか。換言すれば、パウロの言う「信仰と、希望と、愛・・・その中で最も大切なものは愛である」。(1コリント12.13)

 新たな年、み言葉と共にまず第一歩を踏み出しましょう。


前の2件 3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13