わたしが目指している道は

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 学生の頃、国語の授業で詩を書いたことがありました。自分で決めた『富士山』という題の、〈冬が来れば白くなり/夏が来れば黒くなり〉というシンプルなものでした。その頃は、自分が将来、詩の道を歩むとは夢にも思いませんでした。それでも、ふり返ると、元々言葉を綴ることが好きだったのだと、改めて思います。子どもの頃の私は、課外授業での出来事を作文にして提出したこともありました。先生はその作文を道徳の時間に読んでくださり、皆も興味をもって聞いてくれたものでした。

 やがて思春期を迎え、高校生の私はクラスメートの女の子に恋をしました。ですが、意中の人を目の前にするだけで緊張してしまい、ろくに話しかけることもできませんでした。そんな自分の情けなさが身に沁みる日々の後、失恋して、卒業を迎えました。

 卒業後、私はノートを買ってきて、言葉にならない哀しみを詩の言葉にかえて綴り始めました。心の鏡を写し出すように綴られた自分の言葉をみた時、私は詩作する歓びを実感したのでした。

 数ヶ月後、偶然、宮沢賢治についてのテレビ番組で、新しい時代の詩人に向けて語られていた「日常の出来事や自然界を通して目には見えないエネルギーを感じ取り、未来を生きる人々の幸福を示唆するメッセージを語る役割を願う」という賢治の言葉が強く心に響き、「詩人になりたい――」という私の思いは強くなりました。

 その後、最も尊敬する作家・遠藤周作の文学と出逢い、影響を受け、カトリックの洗礼を受けた私は、目には見えない神の思いに耳を澄まし、詩の言葉に変換して、人々へ届ける現在の日々を感謝しています。これからも、人の心に灯のともる言葉を求めて、この道を歩み続けます。

わたしが目指している道は

植村 高雄

今日の心の糧イメージ

 人は色々の不安を抱えながら生きています。

 私も考え事をするときは、深大寺植物公園を散歩し、のんびりとベンチに座ります。時々、隣のベンチに、若いお母さまたちが、足元で遊ぶ我が子を見守りながらママ友と悩みごとを大きな声で会話しています。同じ悩みの会話でも、爽やかな雰囲気で話すお母さんもいれば、心配になるお母さまもいます。私も不安、悩みから抜け出そうと努力している一人ですが、なかなか満足できません。

 さて人間の歴史を眺めますと、次から次へと物凄い歴史があります。宇宙からの隕石による地球規模の災害、疫病、資源不足問題、津波等の自然災害、戦争、よくも人間は生き延びたことよ、と感動してしまいます。自分自身も、あの厳しい環境をよくぞ抜け出せたなあと、想い出しながら冷や汗をかいていますが、これからの日本社会や国際環境を想うと、どう心がけて生きたら良いのだろうと不安になります。

 そんなとき、私をいつも元気づけてくれるのが旧約聖書の「ヨブ記」です。旧約聖書は不思議な書物で、苦しい環境に追い込まれても、逞しく生き延びている人々と出会えます。その生き延びた人々は、苦しい体験の解釈がほかの人と違うのです。不安、怒り、鬱等を悲劇として受け止めてはいますが、破滅への道と解釈していません。ここがなかなか出来ないところです。私なら、ああ、もう駄目だと思うところを、ヨブを初め悲劇の主人公たちは少し諦めているようですが、自分を逞しくしてくれる試練と受け止め、幸福への道と解釈しているのです。

 暗いニュースで溢れている今を、どう生き抜くのが最善の道なのだろうと悩むところですが、このヨブが歩む道を私も真似て生き抜こうかなあ、と思索する日々です。


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