わたしが目指している道は

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 この原稿が何を求めておられるのかよくわかりませんが、私には何となく自分の人生の道のりの終着点のことのような気がします。

 私が再婚した夫は、若い時に出会ってはいたのですが、再会した時には、もう体がとても悪くなっておりました。それでも奇跡的に回復して、どちらも独身になっておりましたので、やはり結婚した方がいいということになり、そうしました。そして、楽しく幸せな時期もあり、夫がやりかけていたライフワークの仕上げの手伝いをすることもできましたが、やはり歳のせいもあり、夫の体の具合はだんだん悪くなりました。それでも、もう思い残すことはないだろうというほどに、様々なことを共にすることができました。

 そして、私が一番嬉しく思い出すのは、彼が失っていた信仰を取り戻した、と昔の彼の親友に伝えていたことです。

 私はそれほどとは思っていませんでしたが、その時、初めて、再会に至るまでの彼の過ごしてきた孤独な時間を思いました。そして、彼の人生は、心残りになりそうだったことも、きちんとケジメがつき、やり残したこともほとんどなく、実に見事に平和に旅立って行きました。旅立ちの前に、私は彼に「みんなによろしくね」と言いました。それは天国で待っているに違いない多くの家族や友人たちに対して、という意味でした。その時には彼はもう話をすることはできなくなっていましたが、私の言った意味が通じたようでした。

 私は夫を送って神様に、「これでよかったでしょうか」と申し上げることができました。これはとても幸せなことだったと思います。でも私には、まだ心配なことがありますが、それでも最後に「これでよかったでしょうか」と申し上げたいと願っています。

わたしが目指している道は

シスター 山本 久美子

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 私が目指している道は、わかりやすく言うならば、「嘘をつかない」生き方です。私には、中学時代から譲れない夢があり、私は、ひたすらその実現のため道を進んできました。

 そのプロセスで、家族や周りの人々の無理解や反対等、私の志を阻む多くのことがありました。家族を安心させるため、自分の夢を諦めようかと迷ったことも度々ありましたが、ふり返って、自分の心に聞いてみると、自分に嘘をつき、どこかで違和感や自分を否定するような苦しい思いが湧いてきました。どのような状況下でも、私の中でその夢は一度も消えることはなかったのです。私は、自分の心に嘘をつくことで生涯にわたって後悔するような生き方はしたくないと思い、自分の信念のまま歩き続け、シスターになりました。私は、今もこの夢が自分の奥深いところで示される神様の道だと信じています。

 聖書の創世記には、神様に逆らい、楽園から追放されるアダムとエバの物語があります。彼らは、創造主である神様の楽園で幸せに過ごして来たにもかかわらず、一時的な人間的誘惑に負け、罪をおかし、神様と向き合うことができなくなりました。神様との約束を破り、「神のようになりたい」という誘惑に流されたアダムとエバは、結局神様から隠れ、離れてしまいました。この物語は、私たちに、自分の良心、心の深い望みに逆らって生きることは、結局自分を不自由にし、幸せな生き方から遠ざけてしまうことを教えていると思います。

 私の選択は、ある時、確かに周りの人々を悲しませましたが、自分の良心や人生に正直であり、幸せであることで、必ず他の人々にも深い思いを分かち合えると信じているのです。


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