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幼子誕生

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 「ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。」(ルカ2・6~7)

 その後に、天使から御告げを受けた羊飼いたちが、「そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。」とあり、これはキリストの降誕の場面を記録したルカ福音書の記述です。(同2・16)また、マタイ福音書には、東方からの占星術の学者たちの来訪で、「家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。」とあります。(マタイ2・11)

 聖書の中で幼子誕生が記録されているのはこの3か所だけです。

 ところが、西洋美術史を紐解くと、古今の聖母子の名画から普通の母子像まで何と多くの画家が幼子誕生をモチーフにしてきたかが解ります。13世紀末期から活躍したジヨットは、アッシジの大聖堂の壁画に、羊飼いの礼拝と3学者礼拝の両場面を描きました。

 しかし、ルネサンスを挟んで17世紀になると、画家の好みが分かれ、「羊飼いの礼拝」はムリリョやカラバッジョが、見る者を現場に立ち会う感動に誘い込むように生き生きと描き、ベラスケスの「東方3博士の礼拝」は、祭壇画のきらびやかな表現と異なり臨場感のある室内が描かれ、凛とした幼子が印象的です。

 ルネサンス時代は聖母子が多く描かれ、レオナルドダヴィンチの描いた「リッタの聖母」と、ラファエロの「カーネーションの聖母」は、幼子が自然なあどけない可愛いらしさで、聖母も我が子に精一杯の愛情を注いでいる手の動きと美しく優しい表情に描かれ、見る度に大きな感動を覚えます。

 幼子でも母でもあった自身を思い、私を懐かしい幸せな記憶へ誘う名画です。

 あなたも是非、一押しの幼子誕生作品を見つけて下さい。