私が目標にしているおばあさんがいる。
ひとりは、五島の小さな島で暮らしていたおばあさん。その人のことは『ばんばのつぶやき』という本にまとめた。
ひとり暮らしなのに、いつ訪ねても生き生きとした姿で迎えてくれた。
流石に年々、姿、形は老いていたが、心は老いず、そのみずみずしい心が小さくなった身体からはみ出るくらいに感じられた。
生活の中心にイエズス、マリア、ヨゼフ様を置き、何をするにもこの聖家族により頼んでいた。
一番の楽しみは2ヶ月に1度入る年金でゆかりの人の御ミサを立てていただくことであった。
また、その島にたまに来て御ミサを立ててくださる神父さまに、おせんべつを差し上げることも楽しみのひとつであった。
その楽しみを語る時、少女のように生き生きとした表情になった。
もうひとりは、私たちの教え方であった梅木のおばちゃん。
おばちゃんを訪ねると、「美沙ちゃん、年ばとったら出来んことが多くなるばってん、まだ残ってることも沢山あるとよ。今日は洗濯ばして、干して、とり入れて、たたんで、掃除もして・・と指ば折って自分が今日したことば数えると、嬉しゅうなってにっこりするとよ」と、生き生きとした顔でしゃべるのだった。
そして私の母。
「みんなによくしてもらってありがたかとよ。感謝!感謝、感謝の毎日たいね。よか思い出があればさ、いくつになってもそれば思い出して楽しかとよ」
このおばあさんたちにならえば、老いても心はいつも生き生きと暮らせるのだ。