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いつも生き生きと

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 小学生の頃、社会科の授業のときに開いた教科書に「仕事は生きがい」という言葉がありました。子どもの私は、将来の仕事について考えても実感が湧きませんでした。その言葉は30年以上経った今も私の記憶に残っており、時折、〈私は仕事に生きがいを見出しているか?〉と、心のなかで問いかけることがあります。

 さかのぼると、文章を書くこと、自分の想いを言葉で綴ることに、小学生の私は歓びを感じていました。お世話になった先生は私の作文を学級新聞に載せたり、皆の前で読み上げたりしてくれました。とくに印象的な作文は、脳性麻痺による障がいをもつクラスメートの車椅子を押しながら一緒に帰った場面や、放課後の廊下で歩行器を使って歩く練習をする彼のそばで、声援を送りながら見守る場面を記したものです。自分の心に残る出来事を書き記し、誰かに読んでもらうことが好きでした。

 あれから時は流れ、大人になった私は詩や文章など執筆の仕事をしています。青春時代は思い通りにいかず山あり谷ありでしたが、40代になった今、「自分らしさを活かす道」を歩む日々を思うと、〈己の道を信じ続けて良かった...〉という、感謝の念が湧いてきます。

 ところで先日、古い我が家の玄関のドアが閉まらなくなってしまい、あわてて工務店に電話をしました。ほどなく、忙しいなかを職人さんが駆けつけてくださり、見事な手さばきで直してくれました。とても助かり、帰り際に深々と頭を下げてから職人さんの顔を見ると、嬉しそうな瞳で、仕事で人を助けていることの気概を感じる微笑みでした。

 帰ってゆく後ろ姿を見ながら、私は〈あの方も自分の仕事に生きがいを見出しているのだなあ〉と、思ったのでした。