心を一つに

片柳 弘史 神父

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 「恐れるな」。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めたとき、フランシスコ教皇は世界に向かってそう語りかけた。「恐れるな」。それは聖書の中でイエス・キリストが弟子たちに繰り返し語った言葉でもある。恐れは、わたしたちの目を閉ざし、自分のことしか考えられないようにする。恐れは、「自分さえ助かればいい」という考え方や、自分の安全を脅かす相手に対する怒りや憎しみを生みだす。恐れが生み出すものは、キリストが説いた愛とはまったく逆のものばかりだ。キリストが、そしてフランシスコ教皇が、怯える人類に向かって「恐れるな」と語りかけたのは当然のことと言える。神がわたしたちに求めているのは、恐れることではなく、愛することなのだ。

 ウイルスとの戦いにおいて、「最も恐れるべきは恐怖心だ」と言ったリーダーもいる。みんなが恐怖心に駆られて自分のことしか考えられなくなれば、たちまち買い占めや暴動が発生するだろう。感染した人、感染の可能性がある人たちに対する差別も横行する。こうして、たちまち社会は分断され、崩壊してゆく。ウイルスとの戦いにおいて最も恐れるべきは、ウイルスよりも、むしろわたしたちの心に生まれる恐怖心なのだ。

 ウイルスと戦うために何が必要か。それは恐れないこと、互いに愛し合うことに他ならない。恐れに打ち勝ち、愛する人を守るため、社会を守るために自分を差し出すことによってのみ、わたしたちはウイルスに勝つことができる。

 ウイルスだけではない。あらゆる悪との戦いにおいて、同じことが言えるだろう。今こそ恐れに打ち勝つ勇気、愛する勇気を持ちたい。

心を一つに

今井 美沙子

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 今年に入り、新型コロナウイルスの感染が世界中に広まり、死者も増え続け、すべての業種が自粛を求められ、世界全体が大不況に襲われる、そんな状況になってきた。

 知人や友人の中にも大打撃を受けている人たちは多い。

 あと、2、3ヶ月後の生活がとてもやっていけそうになく、心配で夜も眠れないと嘆いている。

 それまで豊かに暮らしていたと思っていたのに、実は自転車操業だったそうである。

 ついこの間まで、GNP世界第2位や第3位と誇っていた日本が、実は砂上の楼閣のようなもろさであったことがわかったのである。

 食糧の自給率がわずか37パーセント、他国から輸入できなくなったら、日本人は一体、どのようにして食べていったらいいのだろうか。

 外国人観光客をあてにしたような経済政策は、もろいことがはっきりとした。

 私たちは今、立ち止まり、私たちの親や祖父母の時代を考えなおす、いい機会にしなければと思う。

 私は自分の生活の目標を、得意の時も失意の時も、同じ生活レベルで暮らすことに置いてきた。

 2、3、例を挙げると、御飯は電気釜は使わず、厚手の鍋でガスの火加減を調節しながら炊いている。洗濯機は2槽式。食器洗い機、乾燥機などはなく、手でしっかり洗い、ふきんで拭いている。

 私は親たちの生活からあまりかけ離れた暮らしはしたくないのである。

 こんな時代になったからこそ、私たちは心を一つにして生活を見直し、その分を、もっと恵まれない人たちに差し出しましょうと呼びかけたい。


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