心を一つに

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

 我が家に設置されている防災無線が鳴り響きました。2月半ばのことです。

 「七飯町から新型コロナウィルスの感染者が出ました。町民の皆様は感染防止に努めてください」

 この放送から、我が家のコロナ戦争がはじまりました。私たち夫婦が住む家は北海道の森の中にあります。それ故、大丈夫と思っていました。ところが、すぐに緊急事態宣言が発出され、外出自粛が求められました。毎週通っていた公民館での体操教室や、映画会が中止になり、さらには公民館自体が使用できなくなったのです。

 今年は雪が少なく、3月に入ると、花粉や黄砂が舞うようになっていました。花粉症の私は外に出るときにはマスクが手放せません。マスクはいつも多めに用意していました。

 3月半ばになると感染は日本全国に広がりました。予防のために、人々はマスクを求め、薬局やスーパーマーケットに殺到しました。

 幼い子供を2人抱えている娘の所から、マスクSOSの電話がありました。私はすぐに手持ちのマスクを送ってあげました。妹夫婦の所にも送りました。そのうちに、私の手持ちのマスクも底をついてきました。

 そんな時でした。遠く新潟に住む、刺繍が得意な奈保美さんから手作りマスクが送られてきました。次の日には、東京に住むマキコさんからも布マスクが届きました。作り方の型紙付きです。

 心を一つにしてコロナ戦争に立ち向かいましょう。暖かいエールです。こんなエールが届くと、私も友達にエールを送りたくなりました。

 どうせ作るならプレゼント用に、花柄や赤や黄色の水玉模様の私らしいマスクを作ろう!どこのどんな人がかけてくれるのだろう。少しだけワクワクしてきました。頑張れ、私の手作りマスク。

心を一つに

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 人は単独では生きられません。だから、共同体を作るのです。家族はその基本です。夫婦二人だけでも、共同体です。いわんや子どもがいれば、なおさらです。

 人生にはいろいろな悲劇があります。その代表的なものは、四苦といわれるものです。生まれてくる苦しみ、年を取る苦しみ、病になる苦しみ、死ぬ苦しみの四つです。しかしわたしは、自分自身の体験からいえば、一番の悲劇は、孤独ではないかと思います。誰からも相手にされず、誰からも関わってもらえず、誰からも助けてもらえなかったなど、他者から愛されなかったならば、生きていく希望や勇気も湧いてこないでしょう。

 では反対に、多くの人々が一緒にいる集団の中にいれば、生きる元気、働く勇気が自然に出て来るかというと、必ずしもそうでないことを皆さんも経験されていることでしょう。

 わたしは大家族の中で育ちましたが、両親が早く亡くなったので、いつも孤独でした。兄弟だから、心が一つかというと、そうでもありません。兄弟でも個々人、みな考え方や好悪の感情が違うのです。それは修道生活をしていても、同じことです。

 心がひとつになれるというのは、特別な友人関係だけではないでしょうか。わたしが、心を一つにできたのは、大学生のとき、学科は違うが同じ学寮に住んでいた、ある学生でした。彼とは不思議に意気投合し、会えば、将来のことや宗教のことなど話していました。わたしがなぜ修道会に入会しようとしたのかを話したことが、彼もまた、後になって同じ修道会に入会するきっかけになったとは後で知りました。

 彼とは一緒に働けませんでしたが、今は天国から見守っていることでしょう。


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