「わたしにできないことが、あなたにはできます。あなたにできないことが、わたしにはできます。一緒になれば、すばらしいことができるでしょう。」マザー・テレサは、そう言いながらたくさんの人々を活動に巻き込こんでいった。マザーの活動が世界中に広がった秘密が、この言葉に隠されているように思う。
わたしたちはつい、自分にできることを基準にして相手を裁いてしまいがちだ。「わたしにはこれができる。でも、あなたにはできない」と考えて、相手より自分の方が優れていると思い込んでしまうのだ。逆に、どうあがいてもかなわない相手だと思えば、「あなたにはこれができる。でも、わたしにはできない」と考えて卑屈になってしまう。傲慢な心でも、卑屈な心でも、相手と一緒にやっていくのは難しいだろう。
マザーは、自分が何かをできるからといって思い上ることなく、何かができないからといって自分を卑下することもない。お互いにできることもあればできないこともある不完全な人間にすぎないと知っているからだ。マザーは、傲慢でも卑屈でもない心、ありのままの自分を認め、ありのままの相手を認める謙遜な心ですべての違いを乗り越え、この地球上に神様がお創りになったさまざまなよいものを一つに結び合わせていった。そこに、マザーの秘密があるように思う。
「わたしにできないことが、あなたにはできます。あなたにできないことが、わたしにはできます。」マザーの言葉は、わたしたちの一人ひとりに、かけがえのないよさがあることを思い出させてくれる。
謙遜な心でお互いのよさを認め合い、助け合うことによって、「一緒になる」ことによって、この世界に「すばらしいこと」を実現してゆきたい。