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心を一つに

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 ローマ教皇のメッセージに、英語の「solidarity」という言葉がよく出てきます。日本のメディアでは「連帯」と訳されることが多いようですが、カトリックの公文書では「一致」と訳すようです。

 辞書にはこの単語の翻訳として、連帯、団結、一致、結束といった日本語が書かれています。意味を訳すなら文面の雰囲気に応じて単語を選べば良いのですが、カトリックで使われる「一致」には、特別な意味があると私は思います。

 「solidarity」の語源は「solid」、硬い、結束しているというもの。和英辞典では連帯の英語に当てられていますが、単につながっているだけでなく、一つの硬い存在となるとも受け取れます。私には、連帯よりもずっと強い、「融合」に近い感じがします。

 メッセージでは、「unity」(結合)や「cooperation」(協力)よりも「solidarity」が多く使われる印象があります。それは、心を一つにするということは、単につながったり協力したりするだけではない、強く融合し、一つの存在としてみんなで「まとまる」ということだとの意図があるからではないかと思うのです。

 一致とは、お互いの違いをしっかり認めたうえで、ある点では「不可分」であるということなのでしょう。助け合いのためにまとまるのではなく、まとまった結果、当然助け合いになるという発想です。個人が変われば社会が変わるという、フランシスコ教皇のスタンスと通じます。いまふうに言えばワンチームでしょうか。そして心が一つになれば、日本でよく聞かれる、助ける人が偉くて助けられる人が迷惑をかけているという雰囲気の議論も、自然に消えるでしょう。

 考え方や価値観を超えてまとまるということ、一緒に考えてみませんか?