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心を一つに

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 人は単独では生きられません。だから、共同体を作るのです。家族はその基本です。夫婦二人だけでも、共同体です。いわんや子どもがいれば、なおさらです。

 人生にはいろいろな悲劇があります。その代表的なものは、四苦といわれるものです。生まれてくる苦しみ、年を取る苦しみ、病になる苦しみ、死ぬ苦しみの四つです。しかしわたしは、自分自身の体験からいえば、一番の悲劇は、孤独ではないかと思います。誰からも相手にされず、誰からも関わってもらえず、誰からも助けてもらえなかったなど、他者から愛されなかったならば、生きていく希望や勇気も湧いてこないでしょう。

 では反対に、多くの人々が一緒にいる集団の中にいれば、生きる元気、働く勇気が自然に出て来るかというと、必ずしもそうでないことを皆さんも経験されていることでしょう。

 わたしは大家族の中で育ちましたが、両親が早く亡くなったので、いつも孤独でした。兄弟だから、心が一つかというと、そうでもありません。兄弟でも個々人、みな考え方や好悪の感情が違うのです。それは修道生活をしていても、同じことです。

 心がひとつになれるというのは、特別な友人関係だけではないでしょうか。わたしが、心を一つにできたのは、大学生のとき、学科は違うが同じ学寮に住んでいた、ある学生でした。彼とは不思議に意気投合し、会えば、将来のことや宗教のことなど話していました。わたしがなぜ修道会に入会しようとしたのかを話したことが、彼もまた、後になって同じ修道会に入会するきっかけになったとは後で知りました。

 彼とは一緒に働けませんでしたが、今は天国から見守っていることでしょう。