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ある人の一言

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

 「愛せよ、しかして汝の欲することを成せ」という聖アウグスチヌスの言葉が恩師からの葉書の最後の行に書いてあった。

 わたしには、なかなか実現しない夢がある。それは子どもたちのための図書館を作りたいという夢だ。

 はじめに聖アウグスチヌスは言う、「愛せよ」と。ときどき、わたしは愛する前に、急いで事を起こそうとする傾向がある。「愛せよ」と断っているのはなぜか、誰を「愛せよ」と言っているのか、なかなかよい答えが見つからない。これはもっとも難しいことだが、自分のなかにいる敵だと思うようになった。敵とは何か、それは知らず知らずのうちに、自分を大きく見せようとする自慢話だと思う。それが自分を縛り付けているものかもしれない。このリボンの結び目をほどかないことには愛することは難しい。

 次に「しかして汝の欲することを成せ」という言葉が続く。これはとても勇気がいる。どこで何をするにしても、余計な波風を立てないように人に言われるままになっていると、いつしか心に小さな怒りがたまっていく。行き場を失った怒りは、人を排除するような怒りに転じていく。神さまの本質的な願いを実行するには、卑屈になってはいけない。そこは幼子のように欲するがままに進んで良いのだと思う。

 私の夢である図書館が建つのを待っていては、時間がどんどん過ぎていき、子どもが成長してしまって間に合いそうもない。そうだ!図書館は建物ではない。布ぶくろでもいいのだ。本を入れて子どもたちのもとに出向けば立派な図書館になる。友人がエプロンをリフォームして布ぶくろを作ってくれた。布ぶくろの図書館に本をつめて、子どもたちのもとへと、せっせと本を運んでいる。