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ある人の一言

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 大学生のとき、わたしは学生寮に住んでいました。

 大学では古典語のラテン語を主とする哲学を専攻していたので、月曜日から土曜日までの毎日、1、2時限にラテン語の授業があって、わたしは1週間、その学習に四苦八苦していました。

 ある日、授業を終えて寮に帰ろうとしたとき、フランス人の宣教師で教授をされていた先生に呼び止められて、こんなことを言われました。

 「ムッシュ越前、あなたは16世紀のパリ大学の学寮のモットーを知っていますか」と。わたしが「いいえ、知りません」と答えると、先生は、「よく祈り、よく学び、よく遊ぶ」ですよ、と言われたのです。

 16世紀のパリ大学は文字通り総合大学で、多くの学院(カレッジ)を擁していました。その一つが聖バルバラ学院といって、聖フランシスコ・ザビエルや聖イグナチオ・デ・ロヨラや聖ペトロ・ファベルなどが学生として住んでいました。当時の学院というのは、現代の大学の前身にあたりますが、教授と学生が同居する学寮であり、そこで授業も行われていたのです。

 これらの学寮のモットーが、「よく祈り、よく学び、よく遊ぶ」ことだったのです。

 その言葉を先生がわたしに言ったのは、わたしには遊びがなかったからでした。わたしは学生として勉強もその他の活動も熱心にやりましたが、遊ぶお金もなかったし、戦後の貧しい時代、遊ぶというのは「いけない」ことだと思っていました。けれども、それからは友人を誘って、銀座に行ったり、喫茶店に入ったり、音楽を聞いたりなどしたものです。そして、そのお蔭で、神父になってから多くの若者をキリスト教に導くこともできたのではないかと思っています。