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心を開く

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

 幼稚園の年長の春、新しく入園してきた、ひとりの女の子のお母さんから「この子があなたと友達になりたいと言っているのでよろしくね」と言われ、私は、その日以来、その女の子と大の仲良しになり、幼稚園だけでなく、お互いの家でも度々一緒に遊びました。

 私の最初の親友は、たった1年で遠い街に引っ越してしまったこの女の子です。今はどこでどうしていらっしゃるかもわかりません。しかし、引っ込み思案で人と関わることが難しかった幼少の頃の私に、「友達になりたい」という一言で、「受け入れられた」という自然な安心感と喜びを与えてくれました。

 「心を開く」ということを具体的に教えてくれた、生涯忘れることのできない存在です。今でも、お母さんに連れられて私のところに来た彼女の姿をはっきりと思い起こすことができます。たった一人でも私の存在を心から認め、喜んで共にいてくれることがどんなにか有難く、他人の心を開き、満たすのかを私は体験したのです。私は、彼女がいてくれただけで本当に幸せでした。

 まだあまりにも幼くて、彼女が遠くに行ってしまった悲しみや寂しさは十分味わわずに、いつしか月日が過ぎ去ってしまいましたが、彼女と過ごした数々の思い出と共に彼女が私に示してくれた友情と穏やかな安心感は、今でも不思議に体で覚えている感じがします。

 

 その感じを思い出す度に、私は、主イエスが疎外された人々や心砕かれた人々に積極的に寄り添って過ごされた姿を鮮明に思い浮かべることができるのです。

 彼女は、神様が引き合わせてくださった大切な友です。私は、彼女を通して、心を開き、存在を受け入れ、何もしなくても共にいるということのすばらしさを教えられたのです。