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親と子ども

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

 幼い子と一緒に遊んであげて仲良くなると、大事にしている宝物を見せてくれることがある。とても嬉しいものである。

 ユウ君は、時々我が家に遊びに来てくれる3歳の男の子だ。ある日、食事を終えた大人たちがなごやかに座っていた時、ユウ君がそばに来て、私をじっと見ていたことがあった。何だろうと思っていると、並んでいる御両親の間に立ち、2人に寄りかかるようにして「ユウ君の・・ユウ君のパパとママ!」と誇らしそうに囁いた。ああ、一番大事な宝物を教えてくれたのだ、と分かって私は胸が一杯になった。幸福がそこに姿を現したのが見えるようだった。御両親は照れながら恐縮しておられ、そしてとても嬉しそうだった。ユウ君は小さな掌を御両親の肩において、顔を輝かせていた。

 人は人から生まれて来る。自分を産んでくれた人や育ててくれた人を親と呼び、地球上には、無数の親子関係が出来る。親子の間に愛情があればまた確執も生まれ、お互いに苦しみ悩むのは珍しいことではない。

 創世記では、父なる神が弟アベルの献げ物だけを受け取り、兄カインを拒む。カインは理由が分からず、理不尽な父だと怒り、苦しんだに違いない。

 だが、かつて私たちは皆幼くて、ユウ君と同じ輝く喜びの中に、たとえ一瞬でも、いたのである。悩み苦しむ時、試練にあった時、その喜びの記憶は、私たちを支えてくれるようだ。

 ユウ君のように、世界中の子どもたちが幸福に会えるよう祈りたい。今満たされている子も満たされていない子も、どうかいつも喜びに輝く顔でいられますように。