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親と子ども

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

 「樹静かならんと欲すれども風止まず」という格言があります。親孝行をしようと思うときには、すでに親は、この世にいない。親が生きているうちに親孝行をしなけばならないという戒めの言葉です。

 また「親を思う心に勝る親心」という子を思う親の愛情の深さを謳う格言もあります。親が子に抱く愛情、子が親を慕う心、いずれも、極めて深遠であります。

 今や失効し忘れられた、明治23年の教育勅語は、兄弟愛や夫婦愛など12の徳目が挙げられていますが、真っ先に「父母に孝に」が掲げられています。

 一方、神がモーセに示された「十戒」では、第4番目に「なんじ、父母を敬うべし」とあります。十戒の1から3までは神に関することで、1は「神を唯一の天主として礼拝すべし」、2は「天主の名をみだりに呼ぶなかれ」、3は「安息日を聖とせよ」、そして、4番目からは人間関係であり、その最初が「なんじ、父母を敬うべし」で、親孝行の大切さを示唆しています。ちなみに、5番目からは、絶対命令の禁止事項で、「殺すなかれ」「姦淫するなかれ」「盗むなかれ」などです。

 昭和22年、教育勅語に代わるものとして、教育基本法が制定され、平成18年には現行法に改正されています。

 最初の旧教育基本法で、教育勅語とは違うのが、子の親に対する努めについては述べられておらず、親の子に対する努めが述べられていることです。

 第10条の1項に「父母その他の保護者は,子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする」と規定し、親の責務の重大さを強調しています。